3歳の長男「兄ぽよ」は昨年4月から、児童発達支援センターに通っています。当然ながら「療育ってどんなことをするのかな?」という状態からスタートしました。
1年間、児童発達支援センターに通って、どんなことをやってきたのかと、その感想をしたためたいと思います。
療育ってなに?
障害児のための支援のひとつです。それぞれの状態に応じて、日常生活を送れるようにするための教育(トイレ、着替え、食事など)や、集団生活に適応するための支援をしたりします。(参考:児童福祉法)
「発達支援」と「療育」はだいたい同じ意味で使われます。
使い分けされている時は、療育=本人に対する教育・支援、発達支援=本人に対する教育・支援だけでなく親や関係者に対する支援も含めたもの、と分けることがあるようです。
第6条の2の2第2項 この法律で、児童発達支援とは、障害児につき、児童発達支援センターその他の内閣府令で定める施設に通わせ、日常生活における基本的な動作及び知識技能の習得並びに集団生活への適応のための支援その他の内閣府令で定める便宜を供与し、又はこれに併せて児童発達支援センターにおいて治療(中略)を行うことをいう。
児童発達支援センターってなに?
児童発達支援センターとは、児童福祉法に基づいて障害児のために設置されている機関です。
第43条 児童発達支援センターは、地域の障害児の健全な発達において中核的な役割を担う機関として、障害児を日々保護者の下から通わせて、高度の専門的な知識及び技術を必要とする児童発達支援を提供し、あわせて障害児の家族、指定障害児通所支援事業者その他の関係者に対し、相談、専門的な助言その他の必要な援助を行うことを目的とする施設とする。
小難しく書いてありますが、「児童発達支援センターは、障害児には療育を提供するし、親向けの勉強会も開催するし、他の民間事業所とかとも連携して、地域の障害児の発達を支援します!」ということです。
制度上では児童発達支援センター呼びですが、それぞれ地域で運営されている児童発達支援センターはだいたい「〇〇園」「〇〇の家」みたいなキャッチーな名前が付いています。
療育って何するの?
実際に、兄ぽよが児童発達支援センターでどういう風に発達を支援されているかご紹介します。通っていたのは1クラス定員10人の集団療育です。途中増減がありつつ、4~7人で過ごしていました。
内容や難易度や1日のスケジュールの組み方まで、そのクラスの様子を見て対応してくださっていました。子どもに合わせたオーダーメイドなので、「療育とはこうだ!」という確固たる説明はできませんが、あくまで兄ぽよが過ごした園生活の話として雰囲気を伝えられたらな、と思います。
個別支援計画
まずは発達支援のプランを立てます。その子の課題を洗い出して、目標を立てて、支援の方針を決めて、計画書を作ります。「遊具の順番を待てるようにしたい」とか「靴を履けるようにしたい」とか、職員と話し合いながら目標を決めます。
そして、その目標にどう取り組むのかの方向性を決めます。「大人が声掛けしながら手本を見せる」「順番待ちを示す足形を用意してそこで待つ練習をする」「靴を履きやすいように踏み台を用意する」などなど。
通園
兄ぽよの通う児童発達支援センターは親子通園の施設です。親もついて行って活動に参加します。地域によっては、単独通園と言って子どもだけで通う施設のところもあります。が、我が家の地域は、今の年齢(3歳)だと親子通園一択です。妊娠中も、弟ぽよが生まれてからも親子通園です。弟ぽよ連れて行っています。やばいです。
我が家の地域の児童発達支援センターは、園バスを運行してくださるので助かっています。
朝のおしたく
朝、登園したらリュックから水筒やタオルを出して定位置に置いたり引っ掛けたり、出席シールを貼ったり「おしたく」をします。クラスの様子、個人の様子によって、場所が変わったり、仕切りが増えたり、おしたくができるように工夫されます。
兄ぽよはコレが苦手で、すーぐ気が散って途中で違うことを始めてしまいます。1年通っていまだに苦手です!
お集まり(おあつまり)
先生の前に集まり、名前を呼ばれてお返事をします。お返事の方法はタッチだったり手を上げたり、そりゃもう自由。みんなでお友達の人数を数えて、本日のスケジュールの確認をします。それから今日のお話(紙芝居や絵本)を見ます。
お昼ごはん
兄ぽよの通う児童発達支援センターは全日お弁当です。給食のところもあるそうですね。羨ましいような、でも、食べられる物が少ないのでお弁当でよかったような…。
周りの様子が気になってしまう子には、味集中カウンター(©一蘭)のような仕切りが用意されたりします。この仕切り板は、お弁当以外にも結構活躍します。
「お弁当→お片付け→歯磨き」までがセットなのですが、兄ぽよは当然お片付けと歯磨きが苦手です。
トイレ
子ども用トイレがあり、個室に入りやすいようなキャラクターのシールが貼ってあります。トイレの手順も壁に貼ってあり、足が届かなくなる子用に踏み台も置いてありました。
兄ぽよのクラスでは、まずはトイレという場所に怖がらずに足を踏み入れる、ということが目標の子がけっこう多かったです。年度の終わり頃には、トイレトレーニングを始める子が何人かいました。
設定活動
数ある設定活動の中からいくつかを組み合わせて、その日のスケジュールが組まれています。
室内運動・感覚遊び
トンネル、一本橋、トランポリン、ボールプールなど設置されて遊びます。普段出かける遊び場でできるような普通の遊びです。普通の遊びなんですけど、バランスや手足の使い方を学ぶなどの狙いがあります。
自由遊びに近いので、兄ぽよはこの運動コーナーが最初から好きでした。1年でできることがかなり増えた分野です。最初は両足ジャンプができませんでしたが、今はトランポリンが好きになりました。「うちの子コレ系は苦手だな」という確認もできて、子どもへの理解も深まります。兄ぽよはバランス系苦手です。
体操・音楽・手遊び
音楽に合わせて体を動かします。拍手したりジャンプしたり、手をつないで輪になる振り付けもあります。ポンポンを振ってみたり、マラカスや木琴など楽器を鳴らしてみたりもします。「一本橋こちょこちょ」のような親子のスキンシップもできる手遊びや、「こぶたぬきつねこ」のようなまねっこ手遊びにも挑戦します。体操の振り付けや手遊びの種類は、クラスの様子を見ながら1~2か月同じものを継続していました。
兄ぽよは、まー逃げるので、最初はまったく参加できませんでした。部屋の隅から見ている兄ぽよをちらちら確認しながら、私だけ元気に踊る!しかし、1年の間にまねっこができるようになってきて、好きなジャンルになりました。ぴょんぴょん跳ね回っています。手遊びはまだ難しいのか、控えめにこっそり、できる動きだけマネしています。
感触・造形遊び
感触遊びは、粘土、スライム、新聞紙遊び、スポンジ遊びなど触ってちぎって素材の感触を確かめながら遊びます。造形遊びは、シールを貼ったり、クレヨンで描いたり、紙を丸めたりしてできる簡単な工作をしたりします。季節ものが多いです。梅雨にてるてる坊主を作ったり、節分に鬼のお面を作ったり。五感を使ったり、力の強弱や手先の使い方を学ぶという狙いがあります。
これも最初は逃げていました。何をやらされているのか、意味が分からなかったようで。徐々に、色塗りや紙ちぎりなど好きな部分だけやって逃げるようになってきました。成長です。
自由遊び
室内でおもちゃを出して遊んだり、園庭で滑り台、ブランコ、砂遊びや三輪車で遊びます。設定活動の合間や、親が勉強会など別室に行くとき、毎回いくらかの時間が自由遊び時間になっていました。
療育で大事なのは設定遊びかと思いきや、子ども同士が交流というか、おもちゃの取り合いというか、だれが作ったやつを壊しただの、ぶつかってきただのが起こるのは自由遊び時間なので、この自由遊び時間がけっこう大事なんだなと思いました。
イベント
普段の活動だけでなく、たまにイベントも用意されています。
遠足
園バスに乗って遠出します。ちょっと大きい公園や、ちょっと大きい児童館に遊びに行きました。
兄ぽよの場合、目的地の写真を見せて説明しても、やっぱり不安な様子でしたが、到着すると「遊ぶところだ!」と分かったようで楽しく遊べました。
運動会
スタートからゴールまで走ったり、籠にボールを入れて運んだり、コンビカーに乗って親が押したり、出来そうな競技を考えてくれます。何日か練習をして、家族参観日が本番でした。
兄ぽよは運動会の競技が気に入った様子で、シーズンオフになっても続けたがっていました。
お楽しみ会
先生方が遊びのコーナーを作ってくれていて、自由にまわれる縁日のような状態の日です。大人からすると、これ作るの大変だっただろうなぁ!という感想でした。
普段と雰囲気ががらっと変わっていましたが、兄ぽよは遊べればOK!むしろ朝のおしたく無いのがイイ!というタイプなので、とても楽しんでいました。
家族参観
普段は保護者1人が付き添って通園しますが、この日は家族みんなで見学・参加できます。年に何度かあります。日曜日に設定されていました。
季節の遊び
夏は園庭にプールを出して水遊びをしたり、冬は雪が積もったら雪遊びもします。秋や春には近所の公園に出かけて、散策したりします。
その他
個別療育の日、地域交流(近所の幼稚園に遊びに行く)、内科検診、歯科検診、防災訓練などがありました。また、聞いた話によると、きょうだい児支援や卒業生の親の会もあるそうです。
弟ぽよは活動中ベビーベッドに寝ていたりしたのですが、新年度になって、弟ぽよが大きくなってきたので、活動中に保育士さんが預かってくれる時間ができました。
勉強会・ペアレントトレーニング
たまに親だけ別室に集められて、発達障害に関する勉強会や、ペアレントトレーニング(グループワークや自宅で子どもと実践する宿題などを通して、子どもとの関わり方を学ぶプログラム)をしました。効果的なほめ方、しかり方、声掛けの仕方、遊び方などを学びます。
発達障害の当事者・支援者、医師や歯科医師の講義なども催されます。また、卒業生の親御さんが進路についてお話に来てくださる会もありました。
こうやって書くだけでも凄い盛りだくさんなパッケージを用意してくださっているな!と感心します。実際、当事者や現場で長年関わっている方の生のお話はとても勉強になりますし、アドバイスは痛烈に刺さります。
通ってみた感想
通い始めたころの兄ぽよは、人が多い場所が苦手だったこともあり、大変なことも多かったです。活動にも参加できず、椅子にも座れず帰ることもありました。「何しに通ってるんだ…」と思ってしまうほど。でも、まぁあの頃は登園できただけで十分だったと思います。「支援」ですからね、最初からこれらのプログラムをそつなくこなせる子どもはここには来ません。
通い始めたころは私も、漠然と保育園をさらに手厚くして園生活に慣れさせるのかなぁ、ぐらいのイメージを持っていました。実際、そのイメージも間違ってはいません。ホント手厚いですし、子どもはその空間に慣れます。ただ、通っているうちにそれ以外にも意味と使い方が見えてきました。
児童発達支援センターは、訓練場というよりは実験場だと思いました。
そもそも、なんで療育を受けるのかといえば、もし兄ぽよがこのまま保育園や幼稚園に通えば、空気を読まずに周りの子の行動や先生のやろうとしていたことをぶち壊し、あるいは誘われても逃げ回ってポツンとひとり遊ぶことになるからです。パターンは破壊神と座敷童どちらも想像できますが、とにかく孤立まっしぐらです。そうなっても、保育園や幼稚園ではその状態を根気強く解消するほど人手を割けない。それくらい大変な子。園によっては普通に入園を断られます。というか断られました。
児童発達支援センターでは、保育園や幼稚園と同じような活動をします。そこでも兄ぽよは活動ができなかったりやらなかったりします。そうすると、親と職員がどうしたら上手くいくか考えて、レベルを下げて、工夫して、時にはしばらく待ってみて、活動に参加できるように支援していきます。おわかりでしょうか?保育園や幼稚園と同じようなシチュエーションで失敗させて、解決の糸口や落としどころを探しておくんです。自宅では再現できない活動の中で、椅子の位置からクレヨンの渡し方まで先生と細かく打ち合わせて、色々試しながら実験ができる場所なのです。先生たちと、我が子を共同研究します。プログラムをこなすことが目的なのではなく、どうやったらプログラムに参加できるかを調査するのが目的と言っていいのではないでしょうか。
そうやってその子の取扱い説明書を作っておいて、進路先に引き継ぎます。児童発達支援センターで一緒に過ごした先生が「この子はこういう工夫をすればできる子なんです。こういう時ストレスを感じるのでこうやって配慮をしてあげてください」などと打ち合わせに行ってくれます。移行支援の一環なのだそうです。もちろん、親自身も園生活で自分の子がどう動くか理解が深まってくるので、はっきりしたイメージを持って進路先の担任と話し合いができるわけです。
通い始めた頃は、兄ぽよに色々できるようになってほしい!という焦りのようなものがありましたが、親が焦ってもあんまりいいことはありません。子どもの歩幅に合わせることは、兄ぽよのようなタイプだと特に難しいですが、ちょうど良い期待と褒めができるように、親としても練習中です。それには、この子は今何が好きで、嫌いで、何ができて、何ができなくて、次に何ができるようになりそうか、というところの把握が大事だと思っています。
1年間児童発達支援センターに通いましたが、親子ともに色々な経験が積めて学びも多かったです。こう書いていると、まるで卒業するようですが、まだ同じ児童発達支援センターにお世話になります。よろしくおねがいします!